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松岡建築設計事務所のテクニカル 構造力学の重要性

建築基準法を超える構造性能をめざす

構造力学は物体に作用する万有引力や、加速度と質量の関係を示した慣性の法則といった基礎的物理学と、三角比や連立方程式といった数学を用いて建物が安全に建ち続けることができるように安全性を証明する学問です。
建物には地震や台風、積雪などから建物が健全に建ち続けるための構造の安全性に対する証明作業が必要です。建築基準法においての構造の安全性は、数世紀に一度に生じる暴風や中越地震級の地震がきても倒壊しない目的で設定されています。
弊社は、それよりもさらに高度な性能を目指しています。建物の倒壊を防止するだけでなく、建物の損傷を可能な限り小さく保てるようなものを目指しています。よって、許容応力度といった基礎的計算とバランスの良い壁量計算による耐力壁配置『四分割法』と接合金物からなる規定を超えて、各階ごとの建物の傾き量にあたる【層間変形角】の計算、各階ごとの平面的変形のしにくさをあらわす【剛性率】の計算、各階の重さの中心(重心)と、その階の強さの中心(剛心)のずれをあらわす【偏心率】の検討まで行います。

剛心と重心

ラーメン構造を採用して超長期的住宅をつくる

木質ラーメン構造では耐力壁に依存することが少ないため、構造として評価されない間仕切り壁が多く、壁を簡単に移動でき、長期住宅に必要な可変空間を創ることが可能です。また、将来的に増築を行う場合にも、『ルート2』と呼ばれる許容応力度構造計算がなされているため、増築する場合の耐震性の確認が容易にできる安心感があります。
 
そして、度重なる震災を教訓に、『耐力壁の量とバランス』を重視する構造計算から一歩進んだ『粘り強さ』を加えた構造計算が必要となりつつあります。
木造住宅の耐震性は壁量計算が一般的ですが、木質ラーメン構造では許容応力度による構造計算(ルート1)で構造の安全性を確認します。また、木造住宅の【偏心率】は0.3以下とすることが求められていますが、木質ラーメン構造では【偏心率】を建築基準法の倍にあたる0.15以下で設計しています。これは、長期に使用する住宅の耐震性を考慮したためです。同時に地震動によって建物が受ける応答加速度の重力加速度に対する比をあらわす【標準せん断力係数】を0.25として耐震設計を行います。なお、その値は【耐震等級1】(建築基準法)の場合0.2、【耐震等級3】の場合は0.3と定義されています。

許容応力度計算とCAD・CAM連動プレカットシステム図

構造計算の定義と流れ

構造計算について

構造計算が必要な建物の条件
1. 2階建て以下で、延べ面積が500平方メートルのもの。
2. 高さが13メートル、軒高が9メートルを超えるもの。
3. 木造以外の建物で、2以上の階を有し、延べ面積が200平方メートル(60坪)を超えるもの。
4. 病院、学校のような特殊建築物で延べ面積が100平方メートル(30坪)を超えるもの。

構造計算とはなにか?
1. 許容応力度計算(ルート1) 2. 許容応力度計算(ルート2) 3. 保有水平耐力計算(ルート3) 4. その他(限界耐力計算・時刻暦応答計算) ただし、一般的な木造住宅にみられる『壁量計算』は、ここで言う『構造計算』と呼ばない。

構造計算の流れと分類
[建物の重さを調べる]

[建物の床に載せる物を想定]

[積雪時の屋根にかかる荷重を想定]

[グランドピアノやウォーターベッドなど特殊なものを確認]

[以上の合計を集計する]

[それにより、当該建物にどのような重さ(下向き)が伝わるか調べる]

[その伝わる重さに、当該建物に使われる材料が耐えられるか検討する]

[地震が来た時に加わる力を当該建物の重さから換算する]

[台風が来た時に当該建物に加わる力を調べる]

[地震や台風のときに当該建物に加わる(横向き)力に材料が耐えられるか調べる]
ここまでが、許容応力度計算(ルート1)と呼ぶ。

[地震・台風それぞれの場合に建物がどれくらい傾くかを計算する(層間変形)]
1/120〜1/200以上の傾きを[ 損壊 ]とみなす。3メートルの柱で傾きが1.5cm以内しか傾かせない。

[建物の上下階の硬さのバランスを調べる(剛性率)]

[建物の重さと硬さが偏っていないか確認する(偏心率)]
ここまでくると(ルート2)と呼び、構造計算され建物として評価される。
もちろん、[ 倒壊 ]もしない。

更に、大地震の時に、多少傾いても内装が壊れても全壊しないかを調査する方法が【保有水平耐力計算】(ルート3)と呼ぶ。

建物の重さ
例えば、約40坪の建物は、約40トンの重量がある。
加えて、屋根に1メートルの積雪がある場合は総重量が約58トンにもなる。

地震のときに加わる力
震度五程度の規模でも、その家に加わる横の力は約八トンになる。
地震力は、おおよそ建物重さに比例する。

台風のときに加わる力
高さ10メートルほどで、風の受ける面の長さが3.5間(6.4メートル)の建物には6トンほど(風速30〜40m/S)の力が横向きに加わる。
構造計算した建物は、それでも3メートルの高さに対して1.5cm以下しか傾かない。

誤解を生む木造の耐震基準壁量規定
2階建て以下で、延べ面積が500平方メートル以下なら、どの木造住宅でも前記のような構造計算は必要ない。
しかし、【仕様規定】なるものがあり、これが木造住宅の耐震性の基準にもなっている。
それが、【壁量規定】と呼ぶのである。
例として【壁量規定(地震時)】は
[建物の床面積を計算する]

[A:必要な筋交いの長さと、床面積を掛け算する]

[B:実際の建物の壁と筋館の量を数える]

[AとBの値を比較してAよりもBの値が多くなるように検討する]
そもそも、以上の規定は当該建物の重さに関連しないし、地震時の変形量も考慮にいれていない。

床や柱脚を固める

構造躯体の耐久性を高めるため、主たる柱は下図に示す柱脚金物で直接接合します。そのため、長期荷重による柱から土台へめり込みを排除した構造になります。また、柱は土台と分離されて基礎から緊結するので、万一土台部分に不朽が発生した場合でも柱に不朽が及ぼしにくい構造になっています。なお、柱脚金物の防錆対策としてカチオン電着塗装により保護され金属に対する腐食が起こりにくい仕上げです。加えて、注目すべき基礎幅は170ミリです。

柱脚金物と基礎のパース画像

地盤を知り、基礎の構造計算をする

シッカリとした地盤耐力と、その上部に建つ確かな構造物があってこそ耐震住宅と呼べるのでしょう。先ずは、建築地における地盤の性格を理解することから始めましょう。
地盤(土)の種類は大きく分けて粒状土と粘性土に分けられます。粒性土の特徴は水を含みにくく強さや硬さが含水比に影響されにくいものです。硬さと粘性土は含水比が高く、その影響によって強さや硬さが大きく変化します。そのためにも、スウェーデン式サウンディング試験などの地盤調査が必須となります。そこから得た値を分析して基礎の形状、地盤補強の選定をします。
現在、『ベタ基礎なら大丈夫!』といった風潮がありますが、ベタ基礎が効果を発揮するには建物の四隅の地盤データが均一の場合に限ります。そうでないと、布基礎に比較して自重の重いベタ基礎は、逆に不同沈下の原因になります。ベタ基礎については、荷重が均一になることが条件になるので、荷重バランスの悪いものは『重心ベタ基礎』としたいものです。また、布基礎は『ベース』と呼ばれる地中梁のグリッドを4メートル×4メートル以下にするこことが大切です。
下記表で、地盤の種類とその補強、そして基礎形状をご覧ください。

地盤改良フロー
地耐力調査中